学校の長期休暇に行われる春期講習や夏期講習、冬期講習などの季節講習。多くの受験生が参加する講習であり、中学受験生にとって重要な取り組みです。しかし、なかには季節講習を受けない選択をするご家庭もあり、その影響で苦しむ結果に至るお子さまが少なくないといいます。
今回は、日能研のベテラン講師である荒賀先生と邨田先生に、季節講習の重要性とその理由についてうかがいました。
季節講習は崩したペースの立て直しに最適
端的にいうと、季節講習は何を目的としているのでしょうか。国語担当の荒賀先生が回答します。
「季節講習の目的は、主にその前に習った単元の復習です。例えば、冬期講習の場合は9月〜12月、春期講習であれば2月〜3月に習った単元を復習します。通常の授業で理解できていない部分があったり、ペースを崩してしまったりした場合でも、季節講習でリセットできるでしょう」
季節講習は学校の春休みや夏休み、冬休みなど長期休暇の時期に行われますが、そのたびにリセットできるということでしょうか。
荒賀先生「日能研の新年度開始である2月から考えると、新年度でつまずいても春期講習で取り返せます。4月からまた日常生活が始まり、そこでうまくいかない場合でも、ゴールデンウィークで取り戻せるようにフォローします。学校が休みの期間の講習は立て直しの機会になるので、そこをうまく活用するのがおすすめです」
成績が大幅に下がってしまった場合でも、季節講習をチャンスとして取り組めば挽回できるでしょうか。
荒賀先生「季節講習を挽回のチャンスと捉えると、定期的に立て直しの機会があることになります。何度でも挽回できるので、ペースを崩したり成績が低下したりしても焦らずに取り組んでください」
毎回が大事なチャンス。ペースを崩すとそのたび機会が失われる
季節講習が復習中心であれば、参加しなくても大きなロスはないと考えられるでしょうか。算数の邨田先生が答えます。
邨田先生「季節講習で一度習った単元をあつかうと知ると、保護者の方のなかには『1回くらい受講しなくても平気だろう』と思う方もいらっしゃいます。しかし、好調なお子さまであっても復習は必要です。すべての講習がお子さまにとって大切なチャンスであり、講習を受講しなければ復習のタイミングやペースを戻すチャンスが失われてしまいます」
季節講習を一度休んだ場合、さらなるデメリットも考えられるそうです。
邨田先生「季節講習をまるまる休むと、その期間の学習ペースが乱れてしまいます。過去に学んだ単元の復習や、遅れの挽回ができないだけではなく、講習を休むこと自体がペースを崩す原因になるのです」
季節講習を休むこと自体が、成績低下を招く可能性があるということでしょうか。
邨田先生「十分にあり得ます。どんなに高成績で順調なお子さまであっても、基本的に講習は参加していただきたいと思っています」
休むと苦しむのはお子さま本人。復帰時の負担が大きい
お子さまの同意があったうえで季節講習を休む場合でも、保護者の方には十分に注意していただきたいそうです。
邨田先生「季節講習の不参加をお子さまに提案すれば、ご本人はきっと喜ぶでしょう。休んでいる間も、きっと楽しまれると思います。しかし、その選択によって、お子さま本人が苦しむ結果を招く可能性が高いことは否めません」
お子さま本人が苦しむ可能性について、理由をお聞かせください。
邨田先生「カリキュラムがぬけるということは、大人が想像する以上にお子さまにとってダメージが残りやすいことです。『周りの子たちはみんな受けているのに、自分だけ受けていなかった』と不安を感じる状態で通常授業に復帰することになるため、お子さまは心理的に重たい状況になります」
季節講習の不参加が与える影響は、成績に苦しんでいるお子さまほど大きくなるようです。
荒賀先生「とくに、成績が真ん中より下回っているお子さまは、季節講習を休むと厳しくなるでしょう。勉強は継続していると習慣化されて当たり前になり、苦痛を感じなくなります。しかし、勉強への気持ちが一度切れると、元に戻すのには負担を感じるものです。一定期間休むと復帰に際して心理的なハードルを感じる子が多く見受けられます」
子どもは今を中心に考える。大人は先のことまで想像して判断を
邨田先生は、お子さまが講習の参加に積極的ではないことを理由に、講習の不参加を決めることはあまり得策ではないと言います。
邨田先生「子どもは今を中心に考えます。後のことまで想像できず、『講習を休んでもいい』という提案があれば、そのまま受け入れてしまうでしょう。保護者の方にはお子さまには難しい先のことまで想像していただけると助かります」
季節講習は復習をするためだけでなく、毎日通うという面でも重要だと荒賀先生が語ります。
荒賀先生「季節講習を休まれると、我々もしばらく声をかけられません。お子さまの学習をフォローするためにも、コンスタントに会うというのはとても重要です。季節講習は毎日顔を合わせて声をかけられるため、我々はとても大切な期間だと考えています。『最近調子はどう?』と声をかけられることは、想像以上に大きな意味があるのです」
家庭学習で十分と思われる効率重視派の方にも、お子さまご自身がどう感じるかを重視することを推奨しています。
邨田先生「効率を重視される保護者の方には『同じことをするから家庭学習で十分』と思われることがありますが、非効率的な結果を招きやすい選択です。季節講習のご参加を悩まれる場合は、のちのちお子さまご自身がつらくなる可能性があることを考えたうえで判断されることをおすすめします」
中学受験では、何度も季節講習の機会が訪れます。復習なら家庭でもできると思われるかもしれませんが、塾に毎日通い、決まった時間に学習し、先生やお友だちと共に過ごすということは、お子さまの気持ちの面でも学習効果の面でも、特別な意味を持ちます。
受講を迷われる場合は、日能研までご相談を。どのような状況や理由であっても、お子さまにとってベストな選択を一緒に考えます。ぜひお気軽にご相談ください。
聞き手・文:古賀令奈