
中学受験の悩みごとといえば、併願校の選び方。併願校選びにはさまざまな選択肢があり、親としては非常に悩ましいものです。まして、三つ子が同時に受験するとなると、選択肢はさらに広がります。
今回は、三つ子全員を甲陽学院中学に導いたOさんに、併願校の決め方について詳しくお聞きしました。
併願校は全員一緒が理想的。でも、子どもたちの希望を汲み取ることに
三つ子くんたちの併願校はどのように決められましたか。
「第一志望は全員同じだったので、併願校も一緒が理想的でした。親は2人のところ、子どもは下の子を含めて4人いるため、同行の人手が足りないからです。下の子を実家に預けても、三つ子全員が違う学校を受けると、どうしようもありません。だから、できるだけ同じ学校を受けてほしいという話はしていました」
併願校をそろえるために、工夫されたことはありましたか。
「全員に候補の学校を好きになってもらいたくて、予約困難な説明会も1人ずつ見学できるようにしました。一回の見学で1人しか申し込めないので、何度も予約を取って足を運ぶのはかなり大変でしたね」
結果的には、全日程同じ併願校にはならなかったと聞いています。
「家族で話し合い、本人の受けたいところも受験する方向になりました。1日目の午後は同じA校にしてほしいと私から頼みつつ、2日目から好きなところを選べるようにしました。ただし、同一日に3校受けると親の人員が足りなくなるので、2校までにしてもらい手分けした形です。2日目は長男に夫、次男・三男に私が同行しました」
長男くんは男子校にこだわり。偏差値を大幅に下げてでも選択
併願校をそろえられなかった理由についてお聞かせください。
「長男がどうしても男子校を受けたかったからです。当初は甲陽よりも男子校C校を気に入っていました。次男と三男は、私が当初からプッシュしていたB校を第二志望にしたのですが、長男は『B校もいい学校だけど、共学より男子校のほうがいい』と言って、第二志望をC校にしました」
1日目の併願校は全員でA校を受けたとのことですが、2日目はどのように受験されたのでしょうか。
「2日目の午後、次男と三男が第二志望のC校を受験しました。長男はその時間帯に、本人たっての希望で自宅から近いD校へ。甲陽と比べて偏差値は大幅に下がる学校ですが、もともと男子校だったため男子の割合が高いらしく、それを理由に気に入っていました。あと、特待を狙いたい気持ちも強かったようです」
3日目の受験はどうされましたか。
「3日目の午前は東大寺など気になる学校はあったものの、自宅から遠いので選択肢から外れました。先生からは勧められていましたが、受かっても行けないので対策もしておらず、受験を決めかねているうちに第一志望校である甲陽の合格を全員いただけました。次男と三男はその時点で受験終了です。長男だけ4日目を受けることにしました」
長男くんも合格されたのに、なぜ4日目まで受験を継続したのでしょうか。
「長男自身が『甲陽に受かっても落ちても受験する』と決めていたので、当初の予定どおり最後まで続けました。とくに、第二志望のB校は絶対に受けたいと言っていたので、受けない選択肢はなかったようです」
避けるべき初日の午後にあえて受験した理由
日能研では、初日の午後は受験を避け、塾に集まる慣習があります。三つ子くんたちは、なぜ初日午後に受験をされたのでしょうか。
「分析好きの長男がしゃべってしまうからです。塾に行くと午前受験の感想を話したり、お友だちから情報を聞いてきたりしてしまいそうなので、試験を入れて塾の子と話さないで済む環境にしようと思いました」
多くの塾生は2日目の受験に備えて塾に集まりますが、受験を選ぶことに不安はありませんでしたか。
「初日の午後に塾へ行くと、先生に話を聞いてもらえたり、最終授業を受けられたりするので、行ったほうがいいとは思いました。でも、それよりも多くの人と話してしまうことが心配でした」
そこまで心配されるのは、何か理由があるのでしょうか。
「まだ受験が続く時期に試験の感想を語ると、よそのご家庭に迷惑をかけてしまうからです。『もう絶対にお友だちにはしゃべらないでね』と言うとその約束は守ってくれましたが、やはり本番の試験についてあれこれと語りたがるので、試験を受けておいたほうが得策だと判断しました」
第一志望に合格しても、併願校をすべて受験した理由
第一志望を合格しても、併願校を受け続けることについて、Oさんはためらいを感じる部分もあったといいます。
「その学校を第一志望にしている人からすると、本命の合格後に受験するのはどうなのかと迷ったからです。でも、本人の『絶対に受けたい』という固い意思があったので、受けさせました」
すでに第一志望に合格していた状態でも、長男くんは併願校の合格に向けて努力を惜しまなかったといいます。
「甲陽の合格発表のあとに、日能研で行われていた最後のB校特訓を受講していました。今まで受けたことがなかった特訓なので、見知らぬ子たちと一緒に受けて、過去問を解いていたようです。力試しではありませんが、『ここに勝った』という実感を持って受験を終わりたかったからだと思います」
次男くんと三男くんがご両親のプランに沿った受験を選択するなか、長男くんは自分自身の受験プランに強くこだわったようです。本命に合格をしても、最後まで全力で臨む姿勢に、受験生としてのプライドを感じずにはいられません。
念願の合格や特待を勝ち取り、気持ちよく受験を終えられた長男くんにとって、中学受験はこの上ない成功体験となったのではないでしょうか。日能研では、お子様やご家庭の希望に合わせた受験プランを応援しています。幸せな中学受験を目指す方は、ぜひ日能研にご相談ください。
聞き手・文:古賀令奈