
中学受験では、お子さまのやる気不足に悩む保護者の方が少なくありません。うまくやる気を引き出せるように、性格に合わせた声かけとフォローを意識しましょう。そこで参考にしたいのが、三つ子全員が甲陽学院中学に合格したOさん一家です。
今回は、三つ子ママのOさんが実際にしていた、三つ子くんたちへの声かけとフォローについて詳しくお聞きしました。
長男くんは分析好き。成績も客観的に自己分析
長男くんはどのようなお子さまですか。受験期に印象的だったことや、長男くんらしい特徴などをお聞かせください。
「長男は分析をするのが好きな子です。模試の成績表などを客観的に見て、自分の状況を冷静に把握する傾向がありました。私が成績について大丈夫か尋ねると、『先生が言っていた基準はクリアしている』、『〇〇君はこれくらいだから大丈夫』と返してくる感じです」
しかし、入試直前期になると、分析に強くこだわる傾向がみられたそうです。
「前受けのときに成績表が出て、それをずっと分析していました。本命の入試10日前にもかかわらず分析しつづけて、それにこだわりすぎていたように感じます。入学するわけでもないのに、苦手や得意を分析しながら、『これがダメだったらどうしよう』と不安げにつぶやいていました」
抱え込みがちな長男くんには、ポジティブな声かけで自信を与える
長男くんは分析で自信をつける一方、不安を感じてしまうことも少なくなかったといいます。そうしたとき、Oさんは自信を取り戻せるようなアプローチを心がけていたそうです。
「トライアルや併願校の入試を受けたときに、『自分だけできていなかったらどうしよう』と周りの子の出来栄えを気にすることがありました。そういうときは、『自分ができていなかったら、みんなもできていないと思えばいいよ。実際、結果も出しているしね』と軽い感じで返していました」
一人で抱え込むと不安が強くなっていた長男くんですが、Oさんの対応で切り替えることができたといいます。
「最後は徹底的にやりこんでいたので、本人にも自負があったのだと思います。『得意な人は知らないけど、おれも結構頑張ったな』と気持ちを立て直していました」
好成績を出したときは、忙しいお母さまを気遣って気持ちを抑える場面もあったそうです。
「志望校別の順位が出たときは、『これ、見ておいてね。おやすみ』と自分の成績表を置いていました。褒めてほしかったのに、私がほかの子の対応に追われていたから言い出せなかったのでしょう。あとで必ず褒める時間をつくるようにしていました」
次男くんは真面目で高成績。夏の反抗期で成績ダウンも冷静に対応
次男くんの性格や受験時の状況についてお聞かせください。
「入塾当初から真面目で、同時期の三つ子の成績を見比べてみると、一人だけ高い成績を取っていました。宿題や復習もきちんと取り組み、4年〜5年のころは3人のなかでもっとも優秀だったと思います」
好成績でスタートした次男くんですが、その雲行きは次第に怪しくなっていったそうです。
「6年生の夏ごろ、反抗期なのかストレスなのか、糸が切れてしまいました。何もしないわけではありませんが、勉強しているように見せているというか、書いていることに満足するような勉強の仕方です。ノートを大量に使うことで量をこなした気になったり、国語に偏って勉強したりと、効果的な学習はいえない状況でした」
自己対処する次男くんには、焦りを堪えてそっと見守る
勉強の意識や方法が低下した影響は、成績にも顕著に表れたそうです。
「勉強をしなかった夏の結果は、数ヶ月後に表れました。しかし、成績が大幅に落ちてしまったにもかかわらず、悲観的にはならなかったのが次男の特徴的なところかもしれません」
次男くんは成績の急落に焦る様子もなく、淡々と事実に向き合っていたといいます。
「ヤバいと口では言いながらも、『やるしかない』と物怖じせず向き合うタイプです。あまりに落ち着いているので、こちらが焦るくらいでした。冷静な理由は、自分のなかで成績低下の原因がわかっていたからです」
次男くんは成績低下の原因をどのように解釈していたのでしょうか。
「夏に糸が切れたとき、次男は読書ばかりしていました。読書に時間を割いて勉強にきちんと取り組んでいなかったから、成績が落ちているのは当然だと受け止めていたようです。本人は『大丈夫。やるから』と言い、宣言どおり成績を挽回しました」
三男くんは素直で感情の振り幅が激しい。先生の協力で丁寧にフォロー
三男くんはどのようなお子さまでしょうか。性格や特徴をお聞かせください。
「きょうだいに負けると一番荒れる子です。長男をライバル視していて、模試の結果が出るといつも長男の結果を聞いてきました。成績が全く違うときもありましたが、常に気になっていたようです」
学習面での様子はいかがでしたか。
「気分屋でマイペースなところがあり、気分が乗らなければ勉強や塾を拒んでいました。先生に電話して相談することあったのですが、三男の相談が一番多かったです」
先生との連携プレーが功を奏す場面もあったといいます。
「模試の結果が出る日で自信がないときは、『どうせ2列目の席だから』とごねることがありました。そういうときは、事前に先生に電話をしてフォローをお願いしておきます」
ごねている三男くんをどのように連れ出していたのでしょうか。
「先に長男と次男を塾に送り届けてから、三男と二人で行きます。道中の車内で、『この科目、よかったね』と結果のなかでいいところを褒め、気持ちを高めてから連れていくようにしていました。塾に到着すると先生が別室などで話を聞いてくださり、迎えに行った頃にはすっかりごきげんということが多かったです」
みんなの前だと強がる三男くんには、1対1で本音を引き出す
マイペースな部分はあるものの、持ち前の素直さが三男くんの魅力だといいます。
「何かが終わったときは『お母さんありがとう』と感謝の言葉をストレートに伝えてくれます。しかし、ポジティブのあとにはネガティブもやってくるようで、『おれは無理』『こんなことしなくてもいい』といった発言をします。あらゆる意味で素直です」
不安が強いときは、ほかの2人が寝たあとに1対1で話を聞く時間を設けていたそうです。
「マイペースなので、長男・次男が寝たあとにだらだらと過ごすことがありました。長男と次男の前では『大丈夫』と強がるのですが、1対1のときのほうが素直です。そういう時間にぽろぽろとこぼれる不安を聞いていました」
Oさんがもっとも心配していたという三男くんですが、見事に合格をつかめた理由も素直さにあるそうです。
「ライバル視していた長男と差がついていったので不安はありました。でも、先生たちが『大丈夫』と声をかけてくださっていたので、本人が素直に先生の言葉を信じられたのは大きかったと思います」
お子さまの性格に合わせた対応で適切なフォローを
三つ子というと見た目だけでなく性格も似ているかと思いきや、Oさん一家の三つ子くんたちは三者三様。それぞれ性格が異なり、求める言葉も対応も違います。Oさんは誰に対しても無理強いをせず、お子さまの性格に合わせた柔軟な対応が印象的でした。また、状況に応じて講師のフォローを活用する機転も鮮やかです。
受験のサポートは簡単なことではありません。塾の講師と連携をとることで、思わぬ効果が生まれることもあります。困ったときは一人で思い悩まず、日能研にぜひご相談ください。
聞き手・文:古賀令奈