中学受験の合否を左右する「仕上がり」とは? ベテラン塾講師が重視するピークの時期
話を聞いた人

荒賀健志

西宮北口駅ビル校教室長、国語科主管を経て、現在最難関校対策部門の統括責任者を務める。日能研関西入社以来、灘特訓、甲陽特訓、女子西大和洛南特訓、神戸女学院特訓を担当。最難関校受験生向けの教材作成、灘トライアル等のテスト作成に携わる。再現性が高く、論理的で鮮やかな解法で解説するわかりやすい授業には定評がある。

邨田大輔

岡本校教室長、最難関校主管を経て、現在最難関校対策部門の統括責任者を務める。日能研関西入社以来、灘特訓、女子西大和洛南特訓、四天王寺医志西大和洛南特訓、星光西大和東大寺特訓を担当。最難関校受験生向けの教材作成、灘トライアル等のテスト作成に携わる。受験生を合格に導く戦術の持ち主で、クラス全員第一志望合格という快挙を成し遂げた。

中学受験の指標といえば、偏差値をイメージする方が多いでしょう。しかし、塾講師が本番直前に重視するものは、偏差値でもテストの点数でもなく「仕上がり」だそうです。

今回は、日能研のベテラン講師である荒賀先生と邨田先生に、中学受験の合否を左右するという「仕上がり」についてお聞きしました。

「仕上がり」とは、入試において普段の実力を十二分に発揮できる状態になっていること

国語の荒賀先生によると、ベテラン塾講師は入試を受ける前から結果をある程度予測できるそうです。その理由は、最後の“仕上がり”具合にあるといいます。

荒賀先生「6年生は最後の仕上がりが大事になります。同じ偏差値であっても、最後の仕上がり具合で合否が分かれるといっても過言ではありません」

中学受験における“仕上がり”とは、一体どういう状況を意味するのでしょうか。

荒賀先生「言葉で表すのは難しいですが、入試に際して不安の少ない状態です。『本番でいつもどおりの力を発揮できる状態になっている』という段階で、我々講師はある程度わかります」

仕上がっているかどうかは、テストの点数や偏差値などで判断するものではないそうです。

荒賀先生「偏差値が出る最後のテストは12月の終盤、入試の3週間前あたりに実施されます。本番直前であるこの時期に子どもたちは伸びますが、偏差値として数値化されることはありません。だからこそ、この期間に講習を受け、我々の目が届くところで仕上げていくことがとても重要になります」

ピークの時期が重要!仕上がりが早すぎると残念な結果になることも…

仕上がる時期が早ければ早いほどゆとりがあるかと思いきや、実は仕上がりが早すぎるお子さまには注意が必要だそうです。

荒賀先生「余裕で合格できる実力があっても、ピークの時期が早すぎると受験本番は出涸らしのような状態になってしまうケースがあります。ピークの時期は本番直前に持ってくることが重要であり、2〜3週間でも早ければ心配です」

なぜピークの時期は本番直前でなければいけないのでしょうか。

荒賀先生「ピークを超えてしまうともうこれ以上頑張ることがしんどくなり、どんどん後ろ向きになっていくからです。自信があったはずでも自分ができないことが出たり、できたはずのことができなくなったりして違和感を感じると、一気に崩壊します」

邨田先生「完璧だと思っている状態で、できないことが出てくると崩れてしまうのですね」

算数の邨田先生の言葉に、荒賀先生が頷きます。

荒賀先生「そのとおりです。前向きな時期であればできないものがあっても『そういうこともある』と思えるのに、完璧に仕上がったと思った状況で違和感を感じると、精神的に崩れてしまいます」

事例:入試本番に自信崩壊…得意の算数で成果を出せず、立て直せなくなったケース

荒賀先生「よくみられるケースですが、算数を非常に得意とする子が、2日間の入試のうち1日目に思いのほかできなかった場合、気持ちが崩れて2日目に立て直せなくなることがあります」

入試の最中に気持ちを立て直せなくなってしまった場合、残りの試験は挽回できるのでしょうか。

「一度崩れてしまうと、自信も時間も取り戻すことはむずかしくなります。だから、早く仕上がると危険なのです。試験時期はすでに限界を迎えている状態なので持続しません。『もうこれ以上は無理』というラインを超えると、急に冷めて一気に落ちてしまいます」

早めによい波が来ると保護者の方も安心してしまいそうですが、どのような状態を警戒したほうがよいのでしょうか。

荒賀先生「11月ごろのテストが絶好調、ピークだったというような状態は心配です」

邨田先生「12月になるともう偏差値が出るテストがないので、ピークを超えて崩してしまっても本人が自覚できないケースも少なくありません。直前期に塾に来られない場合は、我々が見抜くことも難しくなってしまいます」

ピークを本番に当てるための調整が不可欠。直前期こそ塾に来てほしい

荒賀先生「我々塾講師は、競馬の調教師と同じです。大きなレースの直前に仕上がるように調整しなければいけません。そのためには、お子さまの性格などからパターンを考え、見極める力が必要です。自分が受け持っている教科だけで判断するのでなく、ほかの先生からも話を聞いて、総合的に判断します」

邨田先生「ピークを本番に当てて仕上げるために、お子さまが自分自身に『やれるだけのことはやった』と言い聞かせられる状態をつくりたいです。『自分を信じて頑張ろう』と思えたお子さまには、大体いい結果が返ってきます。気持ちの持ち方次第で、偏差値10程度の変動が起こるからです」

実際、どのようにしてピークのタイミングを合わせるのでしょうか。

荒賀先生「年内は厳しく指導し、年明けは自信を持たせることを優先して甘めにします。クラスやお子様によってベストな時期や対応が異なるので、状況に応じて細かく調整しています」

ピークの細かな調整を行うために、先生は冬期講習の授業から綿密に考えて指導しているそうです。

荒賀先生「我々はどのようにピークをもっていくかを考えて授業をしています。教材もその考えに基づいて組み立てているため、冬期講習や直前期に休まれると、我々のシナリオが崩れてしまうのです。計算して考えたシナリオが崩れると、お子さまの合否に大きく影響すると言わざるを得ません」

邨田先生「直前期は塾に来なくなるご家庭もありますが、最後はプロでも調整が難しい本当に重要な時期です。塾に来ていただかなければ我々には何も見えなくなるので、冬期講習にはぜひご参加いただきたいです」

 

6年生の冬期講習から直前期にかけての時期は、偏差値にも表れない未知の成長を遂げる時期です。入試本番にベストコンディションで臨めるかどうかは、お子さま本人の自信と、周囲のサポートにかかっています。

日能研はお子さま一人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとり、信頼関係を大切にする塾です。受験本番でお子さまの実力を最大限に引き出したい方は、ぜひ日能研にご相談ください。