中学受験「語彙力」強化の秘訣!言葉が記憶に定着する学習法
話を聞いた人

荒賀健志

西宮北口駅ビル校教室長、国語科主管を経て、現在最難関校対策部門の統括責任者を務める。日能研関西入社以来、灘特訓、甲陽特訓、女子西大和洛南特訓、神戸女学院特訓を担当。最難関校受験生向けの教材作成、灘トライアル等のテスト作成に携わる。再現性が高く、論理的で鮮やかな解法で解説するわかりやすい授業には定評がある。

中学受験において、文章を正しく理解し、国語力を高めるためには、豊かな語彙力が不可欠です。今回は、言葉を効率的に記憶に定着させるための具体的な学習法をご紹介します。それは辞書を活用し、自分だけの「語句ノート」を作成することです。地道な努力が必要な方法ですが、お子様の語彙力を飛躍的に向上させることができるでしょう。

言葉の力が未来を拓く

「なぜ、この文章がなかなか読み進められないのだろう?」「問題文の意味が、どうも頭に入ってこない」。そんな悩みを抱えるお子さんの声を聞くことはありませんか?特に中学受験においては、国語はもちろん、算数や理科、社会の長文問題に至るまで、すべての教科で文章を「正しく理解する力」が求められます。この理解力の土台となるのが、実は「語彙力」なのです。言葉の意味がしっかりと理解できていてこそ、文章全体の意図を正確に捉え、思考を深めることができます。

語彙力は、ただ単語を暗記するだけでは身につきません。大切なのは、言葉が「記憶に定着し、使える知識となること」です。それでは、どのようにすれば、お子さんの語彙力を効果的に伸ばし、中学受験で役立つ確かな力に変えていけるのでしょうか。今回は、言葉を「本当に身につける」ための具体的な学習法について、詳しく解説していきます。

語彙力を確実に育むための具体的なアプローチ

言葉の「コップ」を満たすイメージで語彙力を育む

言葉を理解する過程は、例えるなら「コップに水を満たす」ようなものです。言葉の意味を理解するには、その言葉に一度出会っただけでは不十分で、何度も触れることが必要です。
言葉そのものは「コップ」という入れ物であり、その言葉の意味を理解することは、溢れるまで「言葉のコップに水を満たしていく作業」というイメージです。
一度の出会いでは「コップ」は満たされない ある言葉に初めて出会った時、その意味を完全に理解できることは稀です。例えるなら、コップにわずかな水が注がれたような状態です。
繰り返しの出会いが理解を深める 同じ言葉に二度、三度と出会ううちに、コップに水が少しずつ足されていきます。そして、何度も出会い、様々な文脈で触れることで、コップの水がいっぱいになり、ついには「溢れ出る」ような瞬間が訪れます。
「溢れ出る」瞬間こそが真の理解 この「コップから水が溢れ出る」状態こそが、その言葉が本当に身につき、自分のものになった証拠なのです。 語彙力向上のためには、「同一の言葉にさまざまな文脈の中で出会うこと」が重要です。

記憶に残りやすい「フック」を作る学習法

たくさんの言葉に出会う中で、一度見た言葉を記憶に留め、後で思い出せるようにする「フック(きっかけ)」を作っておくことが非常に重要です。以下に、その具体的な方法をご紹介します。

1.辞書を引く習慣をつけよう
知らない言葉に出会ったら、その場で辞書を引く習慣をつけましょう。一度辞書を引いたからといって、すぐに完璧に覚えられるわけではありませんが、これは記憶に「フック」をかける非常に有効な行動です。一度引いておけば、次に同じ言葉に出会った時に、「あれ、この言葉、前に見たことがあるな」という感覚が残ります。
2.赤鉛筆で「出会った証」を残す
辞書を引いた言葉には、赤鉛筆などで線を引き、印をつけておくのがおすすめです。これにより、「自分はこの言葉を一度調べたことがある」という「証拠」が残ります。この「証拠」は、言葉を記憶に残りやすくするための強力な手助けとなりますので、ぜひ試してみてください。
3.「語句ノート」で言葉を深く理解する
さらに効果的なのが、「語句ノート」を作成することです。
・知らない言葉を書き写す:まず、ノートに言葉を書き出します。
・意味と「例文」を必ず添える:辞書で調べた意味を書き写すだけでなく、「例文」を一緒に書き留めることが非常に重要です。言葉は、具体的な文脈の中で使われることで初めて、そのニュアンスや使い方が理解できます。
・「例解」付き辞書を活用する:辞書を選ぶ際には、「例解」という表記があるものを選ぶと良いでしょう。これらの辞書には豊富な例文が掲載されており、言葉の理解を大いに助けてくれます。
・授業で習った文章を書き写す:さらに進んだ方法として、授業で使ったテキストの文章の一部を切り取ってノートに写すことも有効です。授業で習った文章は、記憶に残りやすいため、その言葉が使われている具体的な場面を思い出しやすくなります。この方法は手間がかかりますが、言葉の定着には非常に効果的です。

地道な努力が大きな実りとなる

語彙力向上への道は、地道な作業の積み重ねです。しかし、今回ご紹介した「フック」を作る学習法や、例文を重視した「語句ノート」の活用など、効果的な工夫を取り入れることで、言葉が身につくまでのスピードは格段に速まります。
確かな学力は、一つ一つの言葉を丁寧に理解し、自分のものにしていくことから始まります。これらの方法をぜひ日々の学習に取り入れ、言葉の力を着実に育んでいってください。その努力は、きっとお子さんの中学受験、そしてその先の豊かな人生において、大きな財産となることでしょう。

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