
中学受験でよくみられる「自走」という言葉をご存じですか。子どもが自分の受験として向き合い、自発的に学習する様子を表します。小学生で自走できる子は多くありませんが、三つ子全員が甲陽学院中学に合格したOさん一家では、3人ともが自走して見事合格をつかんだそうです。
今回は、三つ子ママのOさんに、お子さまたちが自走するようになった理由と、Oさんが重視された体験教育についてお聞きしました。
中学受験では3人とも自走。伴走はほとんどしなかった
三つ子となると伴走も大変かと思います。どのようにされていましたか。
「中学受験は3人とも自走していました。本人任せにする部分が多かったのですが、見すぎたらいろいろと気になってしまうので、逆によかったと思います」
どのようなことをお子さまたちに任せたのでしょうか。
「親がコピーをとってノートに切り貼りするご家庭が多いと思いますが、私は子どもたちにできないことを伝えていました。『サポートはするけど、できるだけ自分たちで頑張ってね』と言っていたので、『自分でなんとかしないと』と思ったのかもしれません。子どもたちが頼んでくることもなく、できないことを謝ると『いいよ、やるから』と返してくれました」
三つ子くんたちと妹さんの4人を育てているOさんにとって、コピーの切り貼りのような伴走は難しかったといいます。しかし、先生から頼まれたことはきっちりと対応していたそうです。
「甲陽特訓で、先生から唯一『お母さん方に頼みます』と言われたことが、過去問の間違えたところをコピーしてノートに切り貼りする作業です。先生から言っていただいたことは頑張ろうと思いました。ただ、それでも3人分だから時間がかかるうえ、間違えれば間違えるほど切り張りする分量が増えて大変でした」
大変な作業に骨が折れる日々だったそうですが、その苦労が吹き飛ぶような喜びもあったそうです。
「私が切り貼りしたことは関係ありませんが、そのノートを今もとても大事にしています。先生からいただいたコメントやサインがありますし、自分はしっかり頑張ったという自信が詰まっているのかもしれません」
幼児期は積極的に体験・実験系のイベントへ
中学受験を始める前は、教育においてどのようなことを重視されていましたか。
「体験や実験のイベントを探して、積極的に外に出かけていました。息子たちは幼稚園のころから創作系や知育系のワークショップを好んでいて、今も創作や達成感のあることが好きなようです」
イベントにはご家族そろって参加されていたのでしょうか。
「私が一人で4人を連れて行っていました。夫が仕事で忙しく、土日も不在だからです。下の子はベビーカーが必要な年齢でしたが、頑張って遠くでも行くようにしていました」
イベントに参加していたのは主に幼稚園時代でしょうか。
「よく行っていたのは、小学校の低学年くらいまでです。日能研に入ってからも4〜5年生の間は塾に行く日数も多くないので、土日やテストのない日は足を運ぶようにしていました」
勉強は大事だけど、その年齢で得られる経験や感動も大切
お一人で乳幼児期の子ども4人を連れてのイベント参加は、かなり大変だったと思います。なぜそこまで頑張られたのでしょうか。
「経験は、そのときだからこそ得られたり感じられたりすることがあると思います。年齢によっても違うので、体験イベントを次々と探しては申し込み、なるべく子どもたちを連れて行くようにしていました」
外部での体験学習を重視される一方で、ご自宅でもお勉強をされていたのでしょうか。
「自宅ではドリルを使った勉強も多少はしていましたが、勉強というより外に出かけることを意識していました。さまざまなことに触れて楽しく過ごしていくなかで、そこから発展して自分で調べることもあり、自然な流れで学習していたように思います」
低学年の段階では、勉強より遊びのなかで賢くなっていくという話をよく聞きますが、お子さまたちの成長を通じてそのように思われますか。
「そこまで大きくは期待していませんでしたが、少し学びにつながったような気がします」
家庭でも体験を重視。雨の日は工作や料理で創造力アップ
体験イベントだけでなく、ご家庭での育児も体験を重視されていたのでしょうか。
「雨が降って公園に行けない日は、工作のキットを使ってものづくりをしたり、料理をしたりしていました」
お母さまが調理方法を教えながら一緒に料理をしていたのでしょうか。
「自分たちで好きなものを作らせていました。『ピザでもクレープでもなんでもいいから、自分のオリジナルで考えてね』と言うと、子どもたちがどんどん提案します。あとは、自分で調べて考えるように促すと、意見を出し合って工夫しながら料理していました」
お子さまたちの意見が合わずケンカになることはありませんでしたか。
「ケンカになることはほとんどなく、仲良くやっていました。負けず嫌いを出すこともなく、誰かが『これ気になるからやってみたい』というと『これもやりたい』と受け止め合う感じです。三つ子でそれぞれ作業が違うと親が大変ということを、本人たちが小さい頃からわかっているので、『まとめたほうが楽だろうな』と察してくれているのだと思います」
活動を中心としたプログラムで楽しく体験学習を
中学受験というと、机上の学習が重要と思われるかもしれません。しかし、三つ子くんたちの成長から、さまざまな体験が好奇心や想像力・創造力、思考力を高めたといえるのではないでしょうか。子どもにとっては遊びも学び。遊びを通じて、自分で考えて動ける子になれるようにサポートしたいですね。
日能研の低学年向けの教育では、活動を通して体験的に学ぶプログラムを導入しています。体験学習を重視したい方は、日能研にぜひご相談ください。
聞き手・文:古賀令奈