
中学受験の王道の目標といえば「第一志望合格」。しかし、その目標が同時3人合格となると、極めてハードルの高い目標にも感じられるでしょう。
大きなプレシャーのなか、息子3人を同時に第一志望校の甲陽学院中学校合格へと導いたのが、三つ子ママことOさん。「第一志望校に全員合格」にこだわった理由や、その思いについてお聞きしました。
目標は第一志望に全員合格。怖かったのは2人合格、1人不合格のケース
3人とも第一志望校が甲陽学院中学校だったとのことですが、お子さまそれぞれの意思が偶然そろったのでしょうか。
「子どもたちは当初、同じところに行きたいとは言っていませんでした。むしろ、『いつも3人でまとめて見られるから、違うところに行きたい』と言っている子もいたくらいです。結局、学力は同程度で聞いてくる話も同じなので、走り出したら自然と同じゴールに向かっていました」
3人とも第一志望校に合格をいう目標を立てた理由についてお聞かせください。
「3人ともご縁がなければ全力で喜べないからです。全員が受かってこそ心から喜べるので、この目標以外ありえませんでした」
お母さまが最も心配されていたのは、どのような状況でしょうか。
「一番怖かったのは、2人受かって1人がダメなパターンです。逆ならまだいいのですが、1人だけダメだった場合は卑屈になってしまうのではないかと心配でした」
偏差値はあまり見ず、すべていい学校だと伝えていた
全員第一志望合格を目指しつつ、お母さまはさまざまな事態を想定していらしたとお見受けします。受験校選びではどのような思いがありましたか。
「偏差値はあまり見ず、受験する学校はすべていい学校だと伝えるようにしていました。併願校にもできるだけポジティブなイメージを持ってもらえるように、『あそこに受かればいいね。でも、他の学校もいい学校だよ』と」
実際に、併願校はどのような基準で選ばれたのでしょうか。
「受験する学校は、すべて通う可能性があるところしか選びませんでした。塾の先生には、奈良県の学校や近隣の受験校以外の学校も勧められましたが、受けたのは『実際に通ってもいい』と思える学校だけです。進学する可能性を考えて、とても大切にしていたポイントです」
「否定的なことは言わない」夫婦間で決めた約束
万が一の事態になる可能性について考えていましたか。
「主人は全然考えていなかったようですが、私はやはり心配でした。たとえどれだけ優秀な子であっても、受験は何が起こるか、どんな事態になるか最後までわからないものだと思っています。だから、合格の瞬間までずっと怖かったです」
声かけや対応なども具体的に考えていたのでしょうか。
「夫婦間で否定的なことは言わないと決めていたので、万が一の対応について話し合ってはいません。でも、私自身は、最後まで子どもたちが猛烈に頑張る姿を見てきて、これでダメならどうしようないと思っていました」
お子さまたちの努力に対し、どのように声をかけたいと思われましたか。
「具体的な言葉はありませんが、『頑張ったよ』という声かけはしようと考えていました」
切磋琢磨というより喧嘩ばかり。負けん気でつかんだ合格
3人全員が合格した理由は何だったと思われますか。
「本人たちが頑張ったからとしか言いようがありません。三つ子というと切磋琢磨して勉強してきたと思われるかもしれませんが、実際はそうでもなく、本当にケンカばかりでした」
三男くんは長男くんへのライバル視していたとお聞きしましたが、そうした気持ち関係が影響した部分はありませんか。
「はい。三男はいつも長男の成績を気にしていました。負けず嫌いなところがあるので、お互い負けたくないという気持ちで頑張った部分はあると思います。ライバルが身近に2人いる環境は大変ですが、よかったのかもしれません」
お子さまの意思や努力を尊重し、前向きなサポートを
受験が3人同時期に重なるだけでなく、志望校まで同じとなるとご両親のプレッシャーは非常に大きいでしょう。それでも、お子さま一人ひとりの意思やひたむきな努力を尊重し、全員合格に向けて前向きにサポートされたお話がとても印象的でした。
現実的に、受験生の全員が必ず第一志望校に合格できるわけではありません。〇〇さんのように、第一志望校だけでなく「受験校すべてがいい学校」と伝えることは、あらゆるご家庭において大切な意識ではないでしょうか。
聞き手・文:古賀令奈